2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『靖国』というタイトルの映画に、靖国以外のことが描かれていないからといって苦言を呈するおかしな高橋源一郎

誰も、彼女に、「そのやり方、ちょっとまずくないですか?」とはいわない(ぼくだって、いえない。なにしろ、彼女は間違っていないのだから)。 監督も、もちろん、いわない。逆に、無言で(カメラで)、「いいねえ。それでいって。どんどんいって」といって…

マーティン・ガードナー『インチキ科学の解読法』

1914年生まれのガードナーが『アルマゲドン』(1998)を見たという事実が、なんだか可笑しいし(うるさいなあ、と顔をしかめながらスクリーンに向かう情景が目に浮かぶ)、その長命を寿ぎたい。いい人は早死にするという感覚が迷信でしかないことが…

ジュリアン・ジェインズ『神々の沈黙』

思わぬ援軍が現れた。認知科学者のダニエル・デネットが、本書の幻覚への過度の依存を批判する一方、文字の発達による右脳の想像力の減退、他者との差異を内面性に帰す思考、叙事詩による物語化、生存戦略としての欺き、そして若干の自然淘汰(とうた)、と…

私にも「理想化」があった…

まったく今の若者の問題としても応用可能、というよりも、そのものではないか。(中略)文庫版の第五部の解説が養老孟司で、なんだかこのシリーズの意義を全否定するようなことを言っていて珍なる光景だ。http://d.hatena.ne.jp/mailinglist/20071223/p1 こ…

『ザ・カー』

私のトラウマ映画。20年ぶりくらい(!)に再見。親子二代にわたって、あやしげな車に追いかけられるブローリン家であった(『ノーカントリー』)。気付いたらいつのまにか音もなく悪魔の車が納屋にいた! …このハイストレンジネス感に悶絶する。いかにも…

魔女狩りとフランク・ダラボン

警察官につれられて現場検証する宮崎に、近隣住人が悪罵を投げつけていたことのほうが恐ろしかった。しかも、そのテレビ映像は、たまたま夏休みで遊びに行っていた祖父母の家で見ていたものだから、まあ祖父母の世代なら当然のことだったのかもしれないが、…

やだなーと思いつつも…

エンディングの、スピルバーグが「レイダース」のラストに引用した、ザナドゥーの大広間に埋め尽くされたたくさんの荷物の山を見るがいい。かれこそはオタクの濫觴であり、オタクとはそもそもイノセンスの怪物の別名であった。http://d.hatena.ne.jp/mailing…

愛の不透明

議会では、自民党議員が教育問題を取り上げた。東国原知事は「宮崎県で『愛のムチ条例』や『愛げんこつ条例』はできないか。愛という範囲で条例化すべきだ」と語った。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080618-00000153-mai-pol その制裁?を録画してネ…

西城有朋『精神科医はなぜ心を病むのか』

立読みしたけど理屈が変だった。精神科医がうつ病にかかって自殺したことを、さもおぞましいタブーであるかのように語っていて、ではがん専門医はがんで死んではいけないのか? 精神科医の精神科罹患率が一般よりも高いことをセンセーショナルに述べ立ててい…

丸山健二「田舎暮らしに殺されない法」

著者の社会への呪詛の度合いがものすごい。それこそダニエル・プレインビューに勝るとも劣らない。しかし著者も結局はせこい現代人で、災害にあった別荘地をみて、「ああいう別荘が買えない貧乏作家でよかった」と胸をなでおろしたりしている。くだらない奴…

支配されているから人間

児童虐待のニュースを眺めていて思ったのだけれど、野生動物はなにものからも支配されていなくて、勝手に生きて勝手に死んだり殺されたりするわけだけれど、児童虐待する親というのはこういう野生動物みたいなものなんだろうな。かれらは、自分より上位の審…

「ホームズは実在する!」あるいは「神を妄想することは不可避に近い」

キャサリンとヒースクリフが実際に存在しなかったことを完璧によく理解していながら、どうして『嵐が丘』を楽しむことができるのかと言っているようなものだろうに。(『神は妄想である』131ページ) シャーロキアンの国の人とも思えない発言だ。シャーロ…

「食うためなら殺していい」理論

週刊現代六月二十八日号28ページ写真、キャプション「皆が写メを撮る異様な光景」には笑ってしまった。おまえもそれを撮っているんだろが! と、小一時間…。しかしこれを見て、食肉にまつわる倫理問題などででてくる「食うためなら殺していい理論」のこと…

シャマラン作品の興収比較

IMDbより。制作費とアメリカ国内の興収比較。 The Village Budget$71,682,975 $114,197,520 (USA) Lady in the Water Budget$75,000,000 $42,285,169 Signs Budget$72,000,000 $227,966,634 (USA) Unbreakable Budget$75,000,000 $95,011,339 (USA)「シ…

不思議な戦後

道をあるいていて、「2016年に東京オリンピックを!」という標語の書かれた広告を見つけて、ああ、今って不思議な戦後なんだなあと感慨を深くした。金持ちと貧乏人の乖離を話題にするのだって、要するに、戦後って事だ。戦後でなくなれば、その乖離を話…

香水、においの、「知性」

私は香水を使ったことがなく、興味もなかったので知らなかったのだが、香水というのは、体につけて自分の体臭とまぜあわせて使う(まぜあった状態から要不要を判断する)のらしい。なんだか示唆的な話だと思いませんか? 香水について詳しくなれば、そのこと…

それは勇気の問題か?

第二の推定どおりの手紙と、統計に関する本が入っていた。手紙の内容は、私のブログを楽しみに読んでいる、確かに禁煙ファシズムだと思うが、立場上患者には禁煙を勧めている、とても実名を出して言う勇気はない、とかいう内容。たはは、と思ってしまった。…

フランク・ダラボン「マジェスティック」

「ミスト」が面白かったので、未見だったこれも鑑賞。寂しい都会人が、うちひしがれた田舎に流れ着いて、そこに根付くまでのお話。田舎に受け入れられた彼が、都会を糾弾するきっかけが、田舎から出て国のために命を投げ出した男の手紙(遺書)だというのだ…

「仕事の早さ」に疑問

週刊文春で福岡先生が江東区の男の仕事の早さに疑義を呈しておられた。私も同感でございます。しかしなにごとも例外はありうるということも気にしつつ…。

尊敬語と謙譲語から遠く離れて

古雑誌(といっても今世紀のものだが)をめくっていて思いついたこと。「こちらコーヒーになります」「千円からお預かりします」などの接客上のマニュアル言葉というのは、要するに尊敬語と謙譲語をなるべく使わないで、丁寧語だけで接客を成り立たせようと…

殺人論そのほか

「わが心のよくて殺さぬには非ず」と親鸞が言ったのは、私見では別に深遠なことを言ったのではなくて、素質のない人間には殺人はできないということに過ぎない。もちろん戦争とか異常な状況は別として、日常的なあれこれから人を殺す人というのは、元来そう…

「そうかもしれない。そうでないかもしれない」は怠慢か

『神は妄想である』を引き続き読む。面白い。ドーキンスは、神という言葉を使ってほしくないと、アインシュタインなどに苦言を呈していて、かわいい。スティーブン・ジェイ・グールドなどが、宗教勢力に対して妥協的な姿勢をとったことも批判する。さらには…

なぜ

平明な水面のような日常に、どぼんと大きな石が投げ込まれて、周囲に渦やら波紋やらが立って、そのあとに浮かび上がる泡のような、「なぜ」。その問いは、必然であって、実は、自発性を欠いている。自然現象でしかない、自分という限りあるいのちが、知らず…

秋葉原の通り魔、形式化、恋愛

武器を買いに、他県である福井に行くとか、単に迷彩服ではなくて自衛隊の制服を欲しがったとか、形式化への欲求が散見される。まあ、それがオタクなのだと言ってしまえば、それまでなのだが、形式化への手順を踏む階梯において他人が犠牲に供される、…まるで…

森田芳光『椿三十郎』

そんなに悪くない、というか、ほとんど、ガス・ヴァン・サント『サイコ』状態。しかしなぜいまこれなんだと不思議だったのだが、角川春樹が仕切った企画らしい。なるほど! である。角川春樹は、永遠に「子」であることにこだわり続けるのだなあ。オレが日本…

中島らも『ロカ』

図書館で、ふと気付いたら、手にしていた。借り出して、喫茶店で読んでいたら、怖くなってきた。なにしろ、ここは、新宿なのだ…。呼ばれたんじゃないか。とはいえ、ちょこっと検索したら、中島らも、このごろ、すこし、盛りあがっているらしい。おととい、深…

ドン・シーゲル『突破口!』

『ノーカントリー』に妙な既視感があったのだが、もしかしたら、これなんじゃないか。多分これだろう。原作者は見てないかもしれないけれど(しかし世代的にはまず見ていそうだが)、コーエン兄弟は絶対見てる筈だし。…しかもこっち(『突破口!』)のほうが…

温暖化ウソ論

映画の待ち時間に、青山ブックセンターでいろいろ本を立読みしていたのだが、あの池田清彦が温暖化ウソ論でいくつか本を出していたのが意外だった。利権として温暖化防止を謳うのは、ピュアな感じをぷんぷんさせてもちまえの強欲さを隠していることなのだか…

『ミスト』

某監督が全否定し、友人が絶賛という展開を前にして、では確認しようと、勇躍六本木へ…。なあんだ。これ、ギャグ抜きで作った『ドリームキャチャー』なのね。『ド』も、視点によっては相当悲惨で、おぞましい物語になり得た。私は『ド』の原作小説を未だ読ん…

エンドなんかねーんだよ

そうだ、私がドーキンスに感じる不快感は、神を捨てて科学に付けば世界は良くなると信じている風なのが不快だからだ。それは狂信とどう違うんだ?自然に依存して生きる人間に、最適な生存形式なんてあるわけがないじゃないか、というのである。宗教も、科学…